完全分離型の二世帯住宅のメリット・デメリット

近年人気の完全分離型の二世帯住宅。今回はメリット・デメリット、そして後悔しないためのポイントについて解説します。

完全分離型の二世帯住宅のメリット・デメリット

家づくりのノウハウ

2023/03/17

二世帯住宅の完全分離型が注目を集めています

近年、親世帯と子世帯がほどよい距離感に住む「近居」に似た生活スタイルとして、完全分離型の二世帯住宅が注目を集めています。しかし、家庭の事情を考慮せずに二世帯住宅の完全分離型を選んで後悔している方も少なくありません。今回は、完全分離型のメリット・デメリット、そしてよくある後悔の例や対策を紹介します。

「近居」とは、住居は異なるものの、日常的な往来ができる範囲に居住することを指します。

二世帯住宅の完全分離型とは?

「二世帯住宅」とは、親世帯と子世帯が一緒に暮らす住宅のことです。子世帯に子どもが生まれて「二世帯・三世代同居」するケースも多く見られます。各家庭のライフスタイルや価値観に合わせて、玄関やキッチンを世帯ごとに設けたり、リビング・ダイニングを両世帯で共有するなど、間取りのバリエーションは大きく分けて以下の3つがあります。

1)玄関から全ての住空間が別々になる「完全分離型」
2)玄関や浴室など、部分的に共用する「一部共用型」
3)ほとんどの空間を二世帯で共用する「同居型」

1)玄関から全ての住空間が別々になる「完全分離型」

玄関から全く別の、独立した2つの住居がひとつになっています。間取りは、建物を左右で分けるパターン(左右分離型)や、上下で分けるパターン(上下分離型)があります。

2)玄関や浴室など、部分的に共用する「一部共用型」

親世帯・子世帯ともに、ある程度独立した住空間を構えつつ、玄関や浴室といった一部の空間を共用します。プライバシーと効率を兼ね備えた間取りです。

3)ほとんどの空間を二世帯で共用する「同居型」

玄関や水まわり、LDKなどほぼ全てのスペースを共用する間取りです。共用スペースが多いため、効率の良い間取りがつくれます。

生活のスタイルや考え方は変わり、親世帯、子世帯ともに「お互いの生活は干渉せず、困ったときに頼りたい」「時々会いたいから近い距離に住みたい」と考える人が増えています。その結果、二世帯住宅の完全分離型は、建築費が高くなりやすいものの、親世帯と子世帯の生活時間帯がずれていても、必要なときにお互いに助け合いながらストレスなく暮らせるため、時代に合った選択肢と言えます。一方、「同居型」「一部共有型」は、プライバシーの確保や生活時間帯の違いで後悔しやすいという欠点がありますが、建築費は完全分離型より抑えやすい利点があります。二世帯住宅の間取りにはそれぞれメリット・デメリットがあるため、各家庭のライフスタイルに合わせて選ぶことが大切です。

▼二世帯住宅の同居型、一部共有型についても知りたい方はこちらの記事をご覧ください

二世帯住宅 完全分離型のメリット・デメリットは?

世帯ごとのプライバシーを守りつつ、必要に応じてコミュニケーションが取れるため、どのタイプの二世帯住宅にするか迷ったときには完全分離型がおすすめです。ただし、メリットがあればデメリットも存在します。ここでは二世帯住宅の完全分離型のメリット・デメリットについて詳しく解説します。

メリット

プライバシーを確保できる

親世帯と子世帯は生活時間が異なるケースが多いです。それぞれのリビング、キッチン、風呂などがある完全分離型であれば、物音や灯りに気を遣うことはありません。好きな時間に料理をする、入浴できるため、お互いが気兼ねなく暮らせます。玄関もそれぞれの世帯に設けられているため、早朝の外出や夜遅い帰りでも干渉し合わずに家を出入りできます。

ライフスタイルに合わせて対応しやすい

注文住宅を建てるときには、20年後、30年後の暮らし方も予測しておきたいものです。例えば、親が亡くなる、施設に入る、あるいは子世帯が転勤になった場合に「完全共有型」「部分共有型」だと使わなくなった部屋や設備が増えてしまい、管理や掃除が大変になります。部屋が余っても家族以外と生活を共有するのは厳しいでしょう。完全分離型であれば、使わなくなった方の住居を賃貸に出したり、家を売ったりもしやすく、ライフスタイルに対応できます。

それぞれの世帯の希望を取り入れられる

キッチン・水回り・トイレの設備や間取り、内装はそれぞれの世帯の希望を取り入れられます。建物の外観デザインは両世帯が歩み寄って決める必要はありますが、建物内部がそれぞれ自由に選択できるのは完全分離型二世帯住宅のメリットだと言えます。

様々な税制優遇がある

二世帯住宅は、税金の軽減措置を受けられる場合があります。完全分離型は「構造上の独立性」「利用上の独立性」「各世帯が専用の玄関・キッチン・トイレを持ち、独立して生活できること、各世帯をつなぐ廊下などは鍵付きの扉などで仕切ること」という要件を満たします。そのため、他タイプの二世帯住宅よりも多くの税金優遇が受けられます。完全分離型の場合に優遇される税金は以下の通りです。

不動産取得税

50m2以上の家屋(240m2まで)を新築した場合、一世帯ごとに1200万円(長期優良住宅の場合は1300万円)控除される。二世帯住宅なら控除額が2倍になる。

固定資産税

新築の建物の場合、3年度分(長期優良住宅の場合は5年度分)の固定資産税が、一世帯あたり120m2まで2分の1に減額される。二世帯住宅の場合は240m2まで適用される。

住宅ローン控除

区分登記、共有登記の場合は、それぞれに住宅ローン控除が利用できる。

相続税

一定の条件を満たせば、二世帯住宅でも「小規模宅地等の特例」を適用して土地の評価額を減額し、節税できます。相続税の主な要件には、「親子が同じ建物に居住し、敷地の名義は親で、子が親に家賃を支払っていないこと」があります。ただし、二世帯住宅を区分所有登記して、1階は親の名義、2階は子の名義などにすると「小規模宅地等の特例」を使えなくなる可能性が高いため、注意が必要です。

相続税の節税について、以前は、玄関・水回りを一緒に使う「完全共用型」、玄関など家の一部が共有の「部分共用型」など内部で行き来ができる二世帯住宅でのみ「小規模宅地等の特例」が適用されていました。しかし、玄関・水回りなどが独立し、内部で行き来ができない「完全分離型」の二世帯住宅の場合でも、2014年に要件が緩和されて以降は、上記の「区分所有登記」をしていなければ「小規模宅地等の特例」が適用されます。

水道光熱費を明確に分担しやすい

完全分離型ならば、水道・電気・ガスなどの請求を完全に分けられます。「完全共有型」「部分共有型」の場合は、光熱費の支払は基本的に一括で請求されます。お金のことは、住み始める段階で両世帯がよく話し合っておかなければ、トラブルになる可能性があります。

デメリット

建築費が高くなる

完全分離型はリビング・キッチン・風呂など、全ての居住空間・設備が2つずつ必要です。そのため設備の数が少ない「同居型」「一部共有型」よりも建築費が高くなる傾向があります。

十分な居住スペースが確保できない

完全分離型を建てるなら、広い敷地が必要になります。広い敷地を用意できない場合、居住スペースが狭くなる可能性があります。

二世帯間のコミュニケーションが取りづらい

プライバシーが守られている反面、完全に居住空間が分かれているため、介護や育児の面で用事がある際に、お互いの世帯を行き来しにくいデメリットがあります。突然倒れてしまう、強盗に入られたなど何か家族にトラブルがあった場合、お互いの気配を感じにくく、異変に気付くのが遅れるおそれがあります。

二世帯住宅 完全分離型は後悔する?

完全分離型の二世帯住宅にはメリットが多いものの、実際に住んでみると後悔したという人がいるのは事実です。どのようなことを後悔しているのか、具体的な例を紹介します。

生活音に気を遣う

完全分離型には横割りタイプ(上下分離型)と縦割りタイプ(左右分離型)の間取りがあります。横割りタイプ(上下分離型)に多いのが生活音が気になる、生活音に気を遣う、という後悔です。横割りタイプ(上下分離型)は子世帯が2階で暮らすケースが大半のため、小さい時など特に子どもの足音が気になってしまうことがあります。定年退職した親世帯と、子育てと仕事を両立する子世帯とでは、どうしても生活スタイルが異なります。生活空間を分けていても、活動時間の違いによる騒音に悩まされるといった後悔があります。

両親の介護が大変

親が高齢になり介護が必要になると、親世帯の生活空間へ行く頻度が高くなります。完全分離型の場合は食事やトイレの介助のたびに、親世帯のもとへ向かわなければなりません。また完全分離型の場合は生活空間を分けているぶん、ほかの二世帯住宅のタイプに比べて親の状況がすぐには把握できず、様子を見るために頻繁に世帯を行き来しなければならないのが大変といったケースもあります。

家に友人を呼びにくくなった

完全分離型だけのデメリットではありませんが、一世帯で暮らしていたときに比べると、家に友人を呼びにくくなります。完全分離型で玄関を2つ設けていても、玄関ドアをすぐ横に並べると、相手がいつ出掛けて、誰が来ているかが分かるなど窮屈な思いをすることもあります。

外回りの掃除や手入れでトラブルになる

完全分離型であっても、庭やバルコニーを共用することはあります。完全分離型だけのデメリットではありませんが、日々の掃除や手入れの分担を決めておかなければ、トラブルになる可能性があります。お金のことと同様、住み始める段階で十分な話し合いが行われなかったことによる後悔です。いずれも途中で話を切り出すことは難しく、一度トラブルになると関係を修復しにくくなってしまいます。

二世帯住宅 完全分離型を後悔しないための工夫

完全分離型に限った話ではありませんが、二世帯住宅を建てるにあたって後悔しないための工夫について紹介します。

生活音が気にならないようにする工夫をする

間取りや建材を工夫し、防音性能を上げることで生活音が気にならなくなる場合があります。例えば、親世帯の寝室と子世帯のLDKを離すことや、ずらした間取りにすること、床や壁に防音効果が高い建材を使用することが挙げられます。横割りタイプの場合は、2階の床に防音マットや防音カーペットを敷くだけでも聞こえ方が大きく変わります。縦割りタイプの場合は、壁に収納を挟むことで横の部屋からの音を軽減できます。また、生活音を気にする場合は横割りタイプではなく縦割りタイプを選ぶのも一つの選択肢です。

生活ルールをあらかじめ決める

両世帯で事前に話し合い、生活ルールを決めておくことが大切です。特に、光熱費を支払う割合や共用部分の掃除の分担などは、曖昧にしておくと大きなトラブルに発展する可能性があるため、明確に決めておくことが必要です。関係が近い親子であるからこそ、お金や分担など話しにくいことも事前にしっかりと話し合うことが大切です。また、子どもを預かってほしい頻度や全員で集まって食事をする頻度を、建てる前の段階で話し合っておけば、内扉をつくるのか、共有スペースを設けるのか、どちらかの世帯に広いリビングを作るのかなど、暮らしやすい間取りを見つけるための手掛かりにもなります。

お互いの要望を反映した家づくりを心がける

二世帯住宅は、二つの世帯がともに暮らす家です。どちらか一方だけでなく、両世帯の要望を取り入れた家づくりを心がけましょう。工務店・ハウスメーカーの担当者との打ち合わせは、毎回家族全員が参加できるわけではなく、特定の家族だけで話が進みがちになります。できれば、同居する親世帯の子である妻や夫など、両世帯を取り持つ家族が家族会議を指揮し、意見をまとめた上で打ち合わせに参加することが望ましいです。家族会議で意見が言えない家族がいる場合は、一人ひとりに個別で話を聞く時間をもうけるのも良い方法です。家族全員の理想を叶えるのは難しくとも、意見をもとに優先順位を決めることはできます。お互いの要望を反映した、後悔のない家づくりのためには、必ず話し合いが必要です。誰かの意見を聞かずに進めてしまうと、良い家づくりとは言えません。

二世帯住宅の知識が豊富にある工務店・ハウスメーカーを選ぶ

二世帯住宅を成功させるためには、工務店やハウスメーカーが持つ設計ノウハウや、営業担当者のヒアリング・調整能力が不可欠です。二世帯住宅は住む人が多い分、意見や好みが分かれることがあります。家族とはいえ、直接言えないこともあるでしょう。しかし、要望を言わなければ、後々トラブルや後悔につながることもあります。また、一般的な家とは異なり、情報が足りずどんな家にしたらよいのかわからない方も多いはずです。こうした場合、二世帯住宅のノウハウが豊富な営業担当者は、両世帯の間取りの要望を引き出しながら、快適に暮らせる建築プランを提案してくれるでしょう。

二世帯住宅の完全分離型を建てるならイデアホーム

二世帯住宅の完全分離型は、他のタイプに比べて多くのメリットがありますが、後悔しないためにはいくつかの工夫が必要です。特に、性能や間取りの問題は住み始めた後に調整することが難しいため、設計段階で家族の要望をどのように取り入れるかが重要です。東京・あきる野で家づくりをしているイデアホームでは、お客様の家族構成や生活環境、理想の暮らし方を考慮した注文住宅や二世帯住宅を提供しています。完全分離型の二世帯住宅を検討している方は、ぜひ一度ご相談ください。

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