第1回 壁量計算ってなに? シリーズ:地震に強い家づくり構造計算の基礎知識
地震に強い家づくりに必要な構造計算の基礎知識をシリーズで解説していきます。第一回目は「壁量計算」について、壁量計算の基本から、2025年の建築基準法改正によるルールの変更などを深掘りします。イデアホームでは、これから起こり得る南海トラフ地震や首都直下型地震に備え、家族を守るための地震に強い家づくりを行っています!
耐震のノウハウ
2024/10/25
目次
構造計算で実現する安全な家づくりの第一歩を学ぼう
今回は、地震に強い家づくりを検討中の方へ、地震に強い家づくりに必要な「構造計算」について、シリーズで分かりやすく解説する第一回目です。今回のテーマは「壁量計算」です。実は、日本の木造住宅の90%以上は、構造計算がされていません。実際、建築基準法では小規模な木造住宅に対して構造計算が義務付けられておらず、ほとんどの場合、簡易的な計算方法である「壁量計算」が使われています。しかし、壁量計算とはなになのか、本格的な構造計算とどう違うのか、知らない方も多いでしょう。そこで今回は、壁量計算がどのような計算なのか、法的な位置づけも含めて解説します。
壁量計算ってなに? 壁量計算の適用範囲と構造計算との違い
まずは壁量計算についての説明とよくある疑問にお答えします。
壁量計算とは?
壁量計算とは、建物の耐震性を確保するために、必要な耐力壁の量を計算する方法です。建物に加わる地震の力に対して、十分な強度を持つ壁がどれだけ必要かを計算し、建物全体のバランスを考慮して配置を決定します。
壁量計算の適用範囲とは?
壁量計算は、小規模な木造建築物でのみ許される簡便な計算方法です。
- 2階建て以下
- 延べ面積500㎡以下
- 高さ13m以下
- 軒高9m以下
これらの条件を満たす木造住宅が対象となります。これらの建物は、構造特性を考慮し、建築基準法で定められたルールを満たすことで安全性が確保されると考えられてきました。しかし、熊本地震や能登地震などの大規模な地震が発生するたびに見直しが議論され、改訂が予定されています。現時点では十分な安全性があるとは言い切れません。
壁量計算でなにがわかるの?
壁量計算により、建物が最低限の耐震性と耐風性を持っていることが確認されます。しかし、壁量計算は床面積と3段階の建物重量しか考慮しないため、構造計算に比べて精度が大幅に低くなります。例えば、建物の重量や形状によっては、壁量計算だけでは十分な耐震性が確保できないことがあります。特に、地盤が揺れやすい場所では、大きな損傷が発生する可能性が多くの構造解析で明らかになっています。したがって、壁量計算を満たすことは最低限の基準であり、壁を増やすなどの慎重な設計が求められます。
壁量計算はいつからあるの?
壁量計算は、1950年の建築基準法制定時に初めて導入され、1981年には大幅な見直しが行われました。この見直しにより、建物の耐震性を確保するために壁量の必要性とその配置バランスがより厳密に求められるようになりました。さらに、1995年の阪神・淡路大震災を教訓に、2000年には耐力壁の配置バランスや接合部の耐力も考慮した設計が求められるようになり、建物が大規模な地震でも損傷しにくくなりました。
壁量計算をしないと家は建てられないの?
壁量計算は、家の耐震性を確保するために必要な耐力壁(地震や風に耐える壁)の量や配置を簡便に計算する方法です。これにより、家が建築基準法に基づいた強度を持つかどうかが確認されます。もし壁量計算を行わずに家を建てた場合、建築基準法違反となり、違反建築物となる可能性があります。違反が発覚すれば、建物の使用が制限されることがあります。
構造計算と壁量計算の違いは?
構造計算と壁量計算は、どちらも建物の耐震性を評価するための計算方法ですが、精度と詳細さに大きな違いがあります。
壁量計算は、比較的簡易な計算で、建築基準法に基づいて最低限の耐震性を確認する手法です。費用や手間が少ない一方、地盤や建物の特性によっては十分な安全性を確保できない場合があります。
構造計算(許容応力度計算など)はより精密な計算を行い、建物全体の強度を高い精度で評価します。これにより、壁量計算よりも強度が高くなりますが、設計の自由度が減少します。窓の大きさや間取りに自由を持たせたい場合、より詳細な構造計算が必須となります。さらに、地盤の揺れやすさを考慮した場合は、時刻歴応答解析などの高度な構造解析を行います。
▼許容応力度計算についてはこちらの記事もご覧ください。
構造計算とは? 地震に強い家づくりに欠かせない基礎知識
地震に強い家を建てるためには、「構造計算」は必要不可欠です。この計算を通じて、建物が地震や風の力に対してどれだけ耐えられるかを判断します。まずは構造計算とはなにか、そして構造計算によく出てくる関連用語についてわかりやすく説明します。
構造計算とは?
構造計算とは、建物が地震や風などの外力に対して十分な耐震性や耐風性を持つように設計されているかを確認するために行う計算です。3階建て、もしくは大規模な木造建築や非木造建物では、構造計算もしくは構造解析が法的に義務付けられています。2階建て以下の一般的な規模の住宅を除き、建築基準法に定められた仕様を満たすためには、各部材が適切な強度を持ち、建物全体が安全に設計されているかを確かめるために、構造計算もしくは詳細な構造解析が必要です。
構造計算によく出てくる関連用語
構造計算によく出てくる関連用語を説明します。
応力とは?
応力は、建物にかかる力を意味します。地震や風、建物自体の重さなど、さまざまな力が建物に加わります。構造計算では、これらの力が各部材やその接合部にどのように掛かり、また変形するかを計算します。
許容応力度計算とは?
許容応力度とは、建物の各部材や接合部が受ける応力に対し、耐えられる力を意味します。許容応力度計算では、各部材や接合部、基礎などに掛かる応力が許容応力度以内になるよう設計し、安全性を確保します。
荷重とは?
荷重は、建物にかかる重量や外部からの力を指します。構造計算では、地震や風圧の短期的な荷重に加え、建物自体の重さ(固定荷重)や家具、人、積雪などによる長期的な荷重も計算します。これを計算しないと、長期的な荷重で梁が変形し、床が傾いてビー玉が転がるようなことが起こります。
保有水平耐力とは?
保有水平耐力は、建物が地震などの横方向の力にどれだけ耐えられるかを示す指標です。特に地震の揺れに対して建物が倒壊しないためには、この保有水平耐力が十分であることが求められます。これは大規模な建築物にのみ求められる基準です。
変形性能とは?
変形性能は、建物が外力に対してどれだけ柔軟に変形できるかを示す指標です。ガラスのように少しの変形で破壊される材料や、カーボンファイバーのように変形しても壊れにくい材料など、部材によって特性が異なります。これらの特性を考慮し、どの程度の変形で建物が危険になるかを計算します。高度な計算方法である構造解析には、wallstatなどの時刻歴応答解析が用いられます。
構造計算書とは?
構造計算書は、構造計算の結果をまとめた書類です。建物が一定の力まで安全かを確認できるもので、木造住宅では法的に義務付けられていませんが、安全性を確認するために重要です。構造計算書には、各部材の強度や応力の分布、耐力壁や基礎の計算結果など、詳細な情報が記載されています。
次回のコラムでは、構造計算が家の設計にどのように役立つのか、更に詳しく説明します。
▼詳しくはシリーズ第2回「今さら聞けない構造計算について」をご覧ください。
2025年の建築基準法改正で壁量計算のルールも変わる
壁量計算は長い間使われてきた方法ですが、現代の建物には合わない部分もあります。そのため、2025年の建築基準法改正で壁量計算のルールが変更されます。しかし、大幅な変更による混乱を避けるため、一般的な木造住宅では、壁量計算の係数変更や計算書の義務化など小規模な変更にとどまっています。
変更点1:壁量計算の審査や構造計算が必要な建築物が増える
これまでは500㎡未満の木造二階建て住宅や平屋住宅では、壁量計算(審査不要)のみで済んでいました。しかし、今後は壁量計算の審査が必要となったり、構造計算(許容応力度計算)が求められる建物が増加します。
– 300㎡以上のすべての住宅が構造計算必須になる
– 300㎡未満の2階建て住宅、および200㎡以上300㎡未満の平屋住宅は壁量計算のみで良いが、別途審査が必須になる
※300㎡以上の木造住宅は非常に少ないため、通常の住宅では引き続き壁量計算が適用されますが、安全性の向上には疑問が残ります。
建築基準法 第20条の改正(構造計算規定)
変更点2:壁量計算の基準が厳しくなる
2025年の改正で、省エネ基準が義務化されます。省エネ基準が厳しくなると、太陽光パネルの設置や断熱材の増加により建物が重くなるため、従来の壁量計算では耐力壁が不足する可能性があります。これに伴い、今後はより多くの耐力壁を設ける必要があり、基準をクリアするための壁量が少し増加します。
すでに構造計算を行っている工務店・ハウスメーカーの業務は変わらない
もともと構造計算を行っている工務店やハウスメーカーであれば、業務内容はほとんど変わらず、価格も大幅には変わりません。そのため、これまでの経験を活かしてスムーズに設計や手続きを進めることができます。
地震に強い家づくりならイデアホーム
耐震性を確認するための簡便な方法として壁量計算がありますが、これはあくまでも最低限の目安に過ぎません。実際、壁量計算で基準をクリアしている住宅でも、構造計算を行ってみると、必要な強度の6〜7割しか満たしていないことも少なくありません。
本当に地震に強い家を建てたいのであれば、迷わず「構造計算(許容応力度計算)」を選ぶことをおすすめします。イデアホームは、耐震性に特化した工務店であり、詳細な構造計算である「許容応力度計算」を行うほか、超高層ビルの建築にも使用される「時刻歴応答解析」も取り入れています。また、地盤の特性に基づく地震の揺れも考慮して設計に反映しており、一般的な耐震等級3をはるかに上回る耐震性を実現しています。
イデアホームでは、モデルハウスや耐震研究所で耐震性について詳しくご説明しています。過去の大規模地震の揺れや、イデアホームの家の強さを実際に体験できる機会もございますので、ぜひ一度お問い合わせの上、お越しください。耐震性にこだわった家づくりをお考えの方は、ぜひイデアホームの設計をご覧ください。
▼耐震研究所についてはこちらの記事もご覧ください。
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