容積率の緩和って?〜知っておきたい緩和の特例〜

土地の広さに対して、どれくらいの規模の建物を建てられるかを規制するものの一つが「容積率」です。同じ広さの敷地でも、建てられる建物の高さは容積率によって左右されます。容積率は条件を満たす場合に緩和されることがあります。家の新築を考える際には、容積率についてきちんとした知識を持っておきましょう。

容積率の緩和って?〜知っておきたい緩和の特例〜

家づくりのノウハウ

2022/03/28

容積率の緩和とは

「容積率の緩和」とは、容積率の基準を緩めることです。都市計画で定められる容積率の上限は、地方自治体によって地域や区域ごとの用途に応じて制限されています。しかしこの制限は、特定の条件によっては緩和することが認められています。容積率の緩和の特例を利用することで、想定していたよりも広い居住スペースを確保できる可能性があります。

そもそも容積率とは

「容積率」とは「敷地面積に対する建物の立体的な容積比率」のことです。わかりやすくいうと「敷地面積に対する延床面積の割合」になります。延床面積の計算は、2階建てでも3階建てでも全ての床面積を合計して計算します。容積率は大抵建ぺい率とセットになっています。建ぺい率が「土地に対して家をどのくらいの広さにできるのか」であることに対して、容積率は「家をどのくらいの高さにできるのか」と考えるといいでしょう。

▼詳しくはこちらの記事をご参照ください

容積率はなんのために必要?

容積率が定められている主な理由は、道路などの公共施設とのバランスを保つことと、住環境の保護になります。 平屋や2階建ての家が立ち並んでいる地域に、急に10階建ての大きな建物が建ったら、風通しや日当たりが悪くなってしまいます。 また、容積率になんの規制もない場合、どこもかしこも高層ビルのようになってしまう可能性があります。どちらを見ても高層ビルのような状態では、景観も悪く暮らしにくくなってしまうでしょう。容積率があることでその区域の景観が保たれ、住みやすい環境が守られるといえます。

容積率はどのように決まるのか

容積率はその土地の所在によって異なります。容積率の制限は2種類あります。「用途地域」に応じて定められる容積率の最高限度である『指定容積率』と、道路幅員が12m未満の場合の容積率である『基準容積率』です。幅員とはあまり聞きなれない単語ですが、これは道路・橋・船などの横の長さのことを言います。今回の場合は道幅のことを指します。どちらが適用されるかは、2つのうちの厳しい方の制限を受けることになります。

指定容積率

「用途地域」とは都市計画に基づき、用途に応じて分けられた13地域のことを指します。指定容積率は用途地域ごとに定められており、用途地域ごとの容積率は以下の表の通りです。

用途地域指定容積率(%)
第1種低層住居専用地域
第2種低層住居専用地域
田園住居地域
50、60、80、100、150、200
第1種中高層住居専用地域
第2種中高層住居専用地域
100、150、200、300、400、500
第1種住居地域
第2種住居地域
準住居地域
近隣商業地域
準工業地域
100、150、200、300、400、500
商業地域200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300
工業地域
工業専用地域
100、150、200、300、400
用途地域の指定の無い区域50、80、100、200、300、400
第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、田園住居地域については高さ制限があるため、容積率の制限内であっても、建物の高さは10mまたは12m以下となります。

購入を考えている土地の容積率を知りたいときは、webで「〇〇市 容積率」と検索すれば調べることが可能です。

基準容積率

建物を建てる敷地に面している前面道路の幅員が12m未満の場合は、前面道路の幅員に応じた容積率の規定が設けられています。前面道路の幅員に応じた容積率は、道路の幅員に低減係数を乗じた数値です。各用途地域の低減係数は以下の表の通りになります。

用途地域低減係数
第1種低層住居専用地域
第2種低層住居専用地域
田園住居地域
40
第1種中高層住居専用地域
第2種中高層住居専用地域
第1種住居地域
第2種住居地域
準住居地域
40
(特定行政庁が指定する区域では60)
近隣商業地域
準工業地域
商業地域
工業地域
工業専用地域
用途地域の指定の無い区域
60
(特定行政庁が指定する区域では40、または80)

一般的には、「第1種低層住居専用地域」や「第1種住居地域」など、居住系の地域の低減係数は40です。
例えば、前面道路の幅員が4mの場合、『4m(前面道路幅員)×40(低減係数)=160%(容積率)』となります。この場合、指定容積率と基準容積率のうちのどちらか厳しい方の制限が採用されるため、指定容積率は200%だったとしても160%の方が適用されることになります。

2つの道路と接している場合

角地の場合などは、敷地の2面が道路と接しています。複数の道路と接している場合は広い方の道路の幅員が計算の基準になります。

この図の場合で行くと、敷地が4mと6mの道に接しています。幅員の広い道路が基準になるため、基準容積率は6m×40(低減係数)=240%と計算できます。指定容積率は200%のため、指定容積率の方が厳しい数値となり、この土地の容積率は200%となります。

用途地域をまたぐ場合

敷地内に用途地域の境界線がある場合は、加重平均で容積率を算出します。つまり、それぞれの用途地域分の面積ごとに各容積率を計算し、その和を敷地全体の容積率の値とするということです。
例えば敷地面積が100㎡で2つの用途地域にまたがっており、敷地のうちの60㎡は指定容積率100%、40㎡は指定容積率200%の場合を参考に見てみましょう。

左側(60㎡)の容積率【100%×(60㎡/100㎡)】+右側(40㎡)の容積率【200%(40㎡/100㎡)】=60+80=140%

計算式はこのようになり、この土地の容積率は140%ということになります。

容積率の緩和の特例について

さて、容積率について理解を深めたところで、今度は緩和について解説します。容積率には一定の条件を満たす場合に緩和される特例があります。どのような特例があるかを見ていきましょう。

特定道路(幅員15m以上の道路)の場合

容積率は前面道路の幅員にも大きく左右されるため、同じ用途地域でも幅員の広い道路に面するのか、狭い道路に面するのかによって容積率が大きく異なる可能性があります。そこで、幅員の広い道路から分岐した狭い道路に面する場合に、敷地の容積率が急激に低下するのを防ぐための緩和の特例があります。この特例では、幅員15m以上の道路(特定道路)から一定範囲内の土地については容積率が緩和されます。
条件は、前面道路の幅員が6m以上12m未満で、特定道路までの距離が70m以内の土地であることです。該当する敷地では、特定道路からの距離に応じて容積率を加算することができます。距離は建物敷地から特定道路に最も近い距離を測ります。この特例によって広い道路沿いの土地に比べ、そこから分岐した細い道路に接している土地の容積率が急激に縮小することを防いでいます。

地下室がある場合

建物内に地下室がある場合、住宅として使用する部分の床面積の3分の1を限度として容積率の計算から除外されます。
「地下室」の定義は、床面から地盤面までの高さが天井高の3分の1以上あること(室内空間の高さの3分の1以上が地下にあること)、地階の天井は地盤面からの高さが1m以下であること(1mを超えて地表に突き出ていないこと)などです。地下室は建設コストが高く、地質によっては施工不可能な場合もあるため注意が必要です。

駐車場がある場合

駐車場に関しては、屋根がない場合は建築面積に含まれませんが、屋根がある駐車場は延床面積に含まれます。しかし、延床面積に含まれる屋根のある駐車場や、ビルトインガレージも、その敷地内の建築物における床面積の5分の1を限度として容積率の計算から除外されます。

小屋裏収納やロフトがある場合

小屋裏収納やロフトなども、直下床面積の2分の1を限度として容積率の計算から除外されます。どういうことかと言うと、収納部屋で、1階と2階の間の場合は1階床面積の1/2まで、2階と3階の間の場合は2階床面積の1/2までのように、すぐ下の階の1/2までの床面積が限度と言うことです。屋根裏部屋の場合は、2階建てなら2階床面積の1/2、3階建てなら3階床面積の1/2になります。
ただし、小屋裏の高さは1,400mm以下とされているため、小屋裏収納の縦のスペースは低くなります。スキップフロアに関しても、天井高1.4m以下であれば延床面積に含まれません。さらに、屋根裏部屋に固定の階段を設置してよいかどうかは、各自治体によって判断が異なるため確認が必要になります。

その他

その他以下の設備も容積率緩和の対象になることがあります。

  • 非常用食料や救助物資などを保管しておく備蓄倉庫であれば、延床面積の1/50まで。
  • 据置型、定置型の蓄電池と付加設備なら、延床面積の1/50まで。
  • 敷地内の建築物においてm電気を消費することを目的として発電する、自家発電設備は延床面積の1/100まで。
  • 配送された物品の一時保管ができる宅配ボックスも延床面積の1/100まで。

また、特例ではありませんが、出幅が2m以下のバルコニーも延床面積には含まれないため、空間を広く活用する際にはぜひ採用を検討したいところです。

緩和とは逆に、斜線制限、日影規制、絶対高さ制限、高度地区、高度利用地区など建物の高さに関する制限を受けて、容積率の限度いっぱいの建物を建てられないこともあります。それらの制限も併せて知っておきましょう。

容積率の緩和をうまく取り入れよう!

同じ広さの土地でも、容積率によって住まいのスケールは大きく異なってきます。できるだけ土地を最大限に活用して、広い家を建てたいという心情は誰にでもあるものです。しかし、そのために決められた容積率をオーバーしてしまうと違反物件になってしまい、さまざまな問題が発生してしまいます。容積率やその緩和措置について正しい知識があれば、もし敷地面積が狭かったとしても有効活用することが可能になります。

きちんと定められた決まりを守り、その中で快適な家をつくるためには、信頼できる建設会社を選ぶことが大切です。豊富な知識と確かな技術がある建設会社であれば、規定の中で可能な限り広く快適な住まいを提案してもらえます。
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